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2008年10月21日

アッシュ-大宇宙の狼



作:田中光二、挿絵:加藤直之によるスペース・オペラ+ヒロイック・ファンタジー小説。
『アッシュ-大宇宙の狼』は、『アッシュ・サーガ』というシリーズの1巻目で、現在、講談社文庫にてシリーズ4巻まで発刊されている。
まるで、外国のSF作家が書いたような壮大で重厚な物語や緻密な考証・設定は、日本人でもここまで完成度の高いスペオペやヒロイック・ファンタジーが書けるのかと、読んだ当時、とても感動した覚えがある(外国作家も、宇宙へ行って冒険したり、タイムマシンで未来へ行って見てきた訳じゃないんだから、日本人と想像力は変わらない筈だといわれれば確かにその通り)。
コミックでいえば『コブラ』に通じる雰囲気があるかもしれない。


惑星ミロシスの灰の中から復讐を誓って蘇った戦士アッシュ、
齢三百年に達する観照者ルカン、惑星シャルミラの美貌の精神感応者ルーラの三人は、
霊能者アミンの力によって、三千年前のテス女王を救うため、過去への旅に出る……。
(裏表紙より)


まず、主人公のアッシュがカッコイイ。
不敵で渋く腕が立ち、大人の男という感じで、物語に安心感を与えてくれる。
どことなく、ロバート・E・ハワードのコナンを髣髴とさせ、名前のアッシュが、「灰」を意味するというところからしてイイ。
宇宙を旅しながら復讐行という設定は、ジャック・ヴァンスの『魔王子』シリーズに近いが、仲間を含めたキャラ立てという意味では『アッシュ・サーガ』の方が各キャラが立っていて、個人的には好きだったりする。
SF作品は、どこまでその世界観や設定を深く作りこんでいるかで、完成度が大きく変わってくる。
上辺だけの難解な用語とか科学的論拠のない設定などがある時点で、とたんにSFは面白さの熱を失ってしまう。
ゲームや映画なら、映像などで世界や登場する小道具などを「こんなだよ」と見せる事もできるが、小説は挿絵があるにせよ基本は活字だけなので、尚更、作者の頭の中でどれだけ世界が構築されているかが重要となってくる。
『アッシュ・サーガ』は読んでいると、そのシーンの映像が目の前に広がっているかのような錯覚を覚える。
地平線に沈む巨大な太陽、広がる大草原(グラス・シー)、空を飛ぶ鳥型飛行機(オーニソプター)などなど、スペース・オペラの名に相応しい描写の数々が随所に散りばめられている。
名作TRPG『トラベラー』のサプリメントとして、『アッシュ』があっても何ら違和感がないぐらい。
というか、元々が設定的にRPGにしやすい設定なのかもしれない。
以下、『アッシュ・サーガ』の既刊タイトル。ただ、どれも入手困難かも。


『アッシュ-大宇宙の狼』
『アッシュと燃える惑星』
『アッシュと母なる惑星』
『アッシュと地球の緑の森』
  

Posted by 今井秋芳 at 21:02Comments(2)小説

2008年10月17日

妖魔の騎士



原題は『Sorcerer's Son』。
男と女の情念、父と子の愛を煌びやかな筆致で描いたファンタジーの名作で、いつか監督としてゲーム化したいと思っている作品である。
著者は、フィリス・アイゼンシュタイン。
33歳の時に発表した『Sorcerer's Son』で注目を集め、36歳で発表した『西部の伝説に(In The Western Tradition)」がネヴュラ賞候補となるなど、女流作家としてめざましい活躍をしている。
『Sorcerer's Son』は、1979年に原書が発刊され、1983年に翻訳版『妖魔の騎士(上)(下)』が日本で発刊された。
翻訳は、井辻朱美 。挿絵は、めるへんめ-かー。


(上巻あらすじ/裏表紙より)
魔法使いレジークは、織り姫デリヴェヴに袖にされた腹いせに一計を案じた。
妖魔を使い、自分の子を織り姫に孕ませようというのだ。
奸計は功を奏し織り姫は男の子を生み落とした。
だが、やがて事態は狡知に長けたレジークでさえ予期せぬ方向に進み始めた。
心を持たぬはずの妖魔が織り姫を愛し、その息子クレイにも父性愛を抱いているらしい。
しかもクレイは、真の父親を訪ねて遍歴し、己の出生の謎を解き明かそうとしていた!

(下巻あらすじ/裏表紙より)
若き騎士クレイは、父を探して諸国を遍歴した。
だが、その探索の旅の行き着くところは、いつも悲報ばかりだった。
あますところ、父を探す手段は唯ひとつ――妖魔に問いただすしかない!
クレイは自ら妖魔支配者になるべく、高名な魔法使いに弟子入りすることになった。
だが、こともあろうに、その魔法使いこそクレイの真の父スマダ・レジークその人だった!
そんなこととも露知らず、一心不乱に魔法修業に精を出すクレイ。
一方、ただならぬ事態に気づいたレジークは、クレイの修業の妨害をするばかりか、果ては殺害まで企むのだった……!?


『妖魔の騎士』は、その世界設定や人物造形などがとにかく素晴らしい。
クレイの真の父親である妖魔ギルドラムは、デリヴェヴを孕ませるために美しい青年の姿に変わっていたが、普段は少女の姿なので、クレイはギルドラムが父親だとは気づかない。
そのもどかしさや、真の愛に目覚めデリヴェヴとクレイを見守るギルドラムの心情など、登場人物たちの心理描写も読む者の心を時に切なく、時に温かくさせる。
しっかりと設定が作られているからこそ、読者はそのシーンや世界を明確にイメージする事ができるのだと思う。
織り姫(織り姫は、ジェイン・ヨーレンの『夢織り女』もそうだが、「織る」という行為が幻想的なイメージをかき立てる。日本でも『鶴の恩返し』において「織る」という行為が幻想的に描かれている)や指輪妖魔などの用語も世界観を構築する重要な要素となっている。
下僕となる指輪妖魔を自分の物とするためには、真の名前を知らなければならないという辺り、日本の鬼や妖怪の民話や《言霊》に通じる部分があって面白い。

そんな『妖魔の騎士』だが、原書『Sorcerer's Son』が発刊されてから9年後の1988年に続編『The Crystal Castle』が発刊されている。
翻訳版『氷の城の乙女』も1997年にハヤカワ文庫から発刊されているので、クレイの冒険の続きが読みたい人は併せて読むといいかもしれない。
訳者が、『妖魔の騎士』と同じ井辻朱美さんなのも嬉しい。
『氷の城の乙女』のあらすじは↓


(上巻あらすじ/裏表紙より)
妖魔の騎士にして金属と織物をつかさどる魔法使いクレイ。
彼が親友の見者フェルダーと共に作った鏡は、見る者の心の望みを映す魔力を備えていた。
だが、鏡にはなぜかクレイの心の望みだけが映らなかった。
それから数年――ふたたび鏡を覗いたクレイは、そこに一人の少女の姿を見た。
さらに何年かが過ぎるうち、鏡の中の少女は麗しい乙女へと成長していった……乙女の正体を求めて妖魔の騎士クレイの新たなる旅が始まる!

(下巻あらすじ/裏表紙より)
鏡の中の乙女の名はアライザ。
氷の妖魔ただ一人を下僕に、人間界と氷界のはざまに建つ氷の城で魔法の修行をしていた。
ようやく捜しあてたアライザに惹かれるクレイだが、乙女はなかなか心を開こうとしない。
やがて、クレイは知った――乙女には魂がないことを。
彼女の師であり実の祖父でもある魔法使いが盗んだのだ!
クレイはアライザの魂を取り戻そうと決心するが……。
きらめく想像力を駆使して描く愛と癒しの魔法物語。
  

Posted by 今井秋芳 at 12:09Comments(6)小説

2008年08月14日

タニス・リーという存在

今の自分に影響を与えた作家のひとり。



タニス・リーは、1947年9月19日生まれのイギリスの女性作家である。
女性ならではの情感と色彩豊かな筆致で、ファンタジーやSFをベースとしたジュヴナイル作品をいくつも書き上げており、淡い恋や切ない恋の中にどこか甘酸っぱい余韻が残るのも特徴。
最近は、ダーク・ファンタジー物が多く、『The Flat Earth(平たい地球)』シリーズなどが有名だが、個人的には初期の短編や中編集が好きだったりする。
『月と太陽の魔道師』や『冬物語』『幻魔の虜囚』など、とても面白い。訳者が巧いというのも大きなポイント。
現在は、ほとんどが絶版になってしまっているためタニス・リーの昔の作品を目にする機会は少ないが、「本物のファンタジー」が読みたい人には是非読んで欲しい。

そういえば、『銀色の恋人』の映画化権をミラマックスが獲得したという話があるが、果たして…。
  

Posted by 今井秋芳 at 21:29Comments(2)小説