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2010年04月10日

●『第9地区』

●『第9地区』★★★★★

日本では、ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『NINE』、
ティム・バートン・プロデュースによるCGアニメ『9(ナイン)』、
そして本作、『ロード・オブ・ザ・リング』の監督ピーター・ジャクソンが
プロデュースしたSF映画『DISTRICT 9=第9地区』と奇しくも同時期に
「9」のつく映画が3作公開される事となった。異色さという点では
『9』もかなり独特の雰囲気を持ってはいるが、『第9地区』も負けてはいない。
CGなどもB級っぽさはなく実写の映像と違和感ない素晴らしい出来だと思っていたら、
エンドロールに『ロード・オブ・ザ・リング』のWETAが担当していると出ていた。
出来が良い訳だ。

ある日、南アフリカ上空に巨大な宇宙船が出現。宇宙船は地球を侵略するでもなく
移動するでもなく、停止したまま。調査団が調べてみると宇宙船は燃料がなくなり
動けなくなり、乗っていたエイリアンたちも衰弱死寸前。政府はエイリアンを難民
として迎え入れる事にする。しかし、人間とエイリアンの共存は難しく、28年後、
超国家機関MNUは彼らを現在の居住区『第9地区』から強制収容所へと移住させる事を
決定した。しかし、その立ち退き交渉の最中、MNUの役人ヴィカスは身体に異変を感じる
のだった。

主人公は、エイリアン立ち退きを任された小役人ヴィカス(シャルト・コプリー)。
コメディーかといってもおかしくない設定だが、本作は至って真面目にシニカルに、任務にはマニュアル通り忠実で
権威や肩書きに弱い典型的な役人タイプのヴィカスを中心として、ニュースキャスターや評論家、主人公の同僚や
家族など様々な人たちが登場するドキュメンタリーのようなタッチで話が進んでいく。
宇宙船もエイリアンも実在するかのように計算された映像やシナリオが従来の異星人接触物とは違って
非常に新鮮(公園や飲食店にはエイリアン立ち入り禁止の看板が掛かっていたり、エイリアンの居住権を
主張する人間の人権保護団体がデモしていたりとか)。全世界規模の事件やアメリカ万歳なド派手な戦いもなく、
あくまで南アフリカのいち地域で起こった出来事を日常の出来事のように一貫して描いている。
その「日常」というキーワードが本作の特徴でもある。観ていて、国産アニメの『NieA_7(ニア アンダーセブン』
を想い出した。あちらはお気楽宇宙人の緩い日常だったが(笑)。
本作の土台となる「自分たちと異なる存在を隔離して区分する」といった設定は、
南アフリカのアパルトヘイト政策を意識しているのは間違いないだろう。
アパルトヘイトとは、1948年に法令化された南アフリカ共和国内での白人と非白人を
明確に区分・差別する事を目的とした人種隔離政策で、レストランや公園、トイレなどを
白人用と非白人用に区分したり、非白人は白人居住区に入る事を許されていないなど、
人間を白人、エイリアンを非白人に置き換えるとアパルトヘイトとの類似点が多い事がわかる。
アパルトヘイトといえば、反アパルトヘイトを掲げたために投獄され、後に解放されて
南アフリカ大統領に就任したネルソン・マンデラ大統領が有名であるが、こちらも本作
『第9地区』と同じ年に『インビクタス/負けざる者たち』として映画公開されているのが
奇妙な符号といえば符号である。
人間とは本来、自分と異なる存在を容易に受け入れ難い排他的な生き物である。
その排他的な感情をコミュニケーションによって乗り越え、理解し合って社会は成り立っている。
冒頭からエイリアンを不快な存在、忌むべき存在として描きながら、次第に彼らとのコミュニケーションを
通じ、彼らが何を考え、どのような生活を送っているのかを主人公・ヴィカスの体験を通じて、
映画を観ている我々にも訴えかけてくる手法は見事だといえる。今まで仲間、同じ種族だと思っていた人間が
本当は残酷で非道な生き物で、不快だと思っていたエイリアンが本当は人道的で無害な生き物なのだという
アプローチは、かの大作『アバター』を彷彿とさせるが、本作の方が心に刺さる部分は多い。
それは、エイリアンにかつて非人道的な差別を受けていた黒人の姿がだぶるからなのか、それとも
数奇な運命を辿る主人公の哀愁漂う姿がそうさせているのかはわからない。
ただ、保身重視と排他的だった主人公が、次第に弱き者のために命を賭し、非道に対して戦う姿は、
人間としての正しき姿を示してくれるし、終盤のカタルシスに繋がっている。
空に浮かぶ宇宙船を見上げながら満足そうな笑みを浮かべるヴィカスの顔が印象的だった。
最後に本作を象徴する名言を。

人格はきびしい状況のもとでこそ計られる。
        ―――ネルソン・マンデラ



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Posted by 今井秋芳 at 23:03│Comments(0)シネマ
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